幸せ✕小瀧 望
私と望は友達。 そう、ただの友達。
私は友達だと思ったことなんてないけど望はきっとちがう。
望のことが好きだ。いつでもノリが良くて明るい笑顔の望が大好きだったの。
望を追いかけるようにして入ったサッカー部のマネージャーも今となっては意味がない。
学校の帰り道はいつも望と一緒。くだらない話をして笑い合うのがとても楽しかった。
「なぁ、家どこ?」
「あそこのかどを曲がったとこ!なんで?」
「まぁ俺優しいから?しょーがないから送ってってやるってことや!どーや嬉しい??」
「はいはい、ありがと」
こんなこと言って実は夜だから心配してるのかなぁって思ったり。
夕方の綺麗な夕空に彼のサラサラの髪の毛が反射してより一層かっこよく見えるんだ。
これは私だけが見れる特権。
なんて、ただの思い違いだったんだ。
いつもどおり帰り道を一緒に歩いている時、
「あ、…」
お姉ちゃんだ。デートの帰りだったのかいつもより何か可愛い。
チラッと望を見るとやっぱり、案の定見惚れてるし。
あの日、望が急に家まで送ってやるって言った日から望がおかしかった。様子が変で何かと私のお姉ちゃんのことを聞いてくる。それで気付いちゃったんだ。
❮本当はもう分かってたの あなたがどんなにその人を好きなのかも❯
私のお姉ちゃんは私より3つ年上で大学生。私と違って綺麗で美人でモテるお姉ちゃんだった。
お姉ちゃんに彼氏がいることは望も知ってる。けど諦めてないみたいで、アタックし続けて今日にいたる。
今日もまた友達の私に相談してくる。もちろん、私の気持ちは秘密なのだ
❮あなたが恋におちていくその横で私はそっとあなたに恋をしていたの❯
「全然振り向いてくれへん~なぁ~どうしたらええかな~」
「花火大会誘ってみたら?」
「小瀧くんとは行けませんって断られてもーた! なんで!?なんでやと思う?」
「彼氏がいるからでしょ!」
「俺と一緒に行ったほうが一万倍楽しいで!? そう思わん!?」
「それはどうかな~」
なんでやねん!っていつもどおりの返しが返ってくる。お姉ちゃんのことで悩んでる望はいつも気難しそうな顔をしているから笑ってくれるとこっちも自然と笑顔になる。
「何笑っとんねん~こっちは本気やねんでぇ~?」
「わかってるよ」
そんなの、もうとっくに、わかってるに決まってんじゃん。だって私は望が好きなんだから。
❮何にも気づかないで笑うあなたの横顔をずっと見ていました❯
じゃあ私と一緒にお祭り行く?…なんて、言えない。
❮最初からあなたの幸せしか願っていないから それがたとえ私じゃないとしても❯
それから1か月、ついにお姉ちゃんは彼氏と別れて望と付き合い始めた。
なんで、どうして、なんて私には言えなかった。だって、望がすごく幸せそうだったから。
「なぁ、こないだな、俺デートに遅刻してもうて怒らせてもうたんよ」
「お姉ちゃんめっちゃ怒ってた?」
「いやそれがな、怒ってる顔も可愛ええの!そう言ったら帰ってもうて、デートなしになってん!ひどない!?」
「それは望がわるい」
やっぱり今回も気づいてくれてないっぽいなぁ。
❮私が聞きたかったのは終電の時間でも好きな人の悪口でもなくて❯
❮せめて今日のために切った髪に気づいて似合ってるよって言って欲しかった❯
望が好きなのは私もお姉ちゃんも同じ。でも望が好きなのはお姉ちゃんだけで。
一緒にいたいって思うのも一緒に笑っていたいって思うのもお姉ちゃん一人だけ。
今日もまた喧嘩して泣きべそかいてる望。私に悪口をすべて吐き出す。けどやっぱり最後は、
「俺はあいつやないとダメやねん…本気であいつのことが好きなんや」
❮ほら横にいてもまた辛くなってる その人より私の方が先に好きになったのにな❯
「ほら望、お姉ちゃんのとこ行きなよ」
「俺、大丈夫かな」
「なんかあったら私に任せて」
「いつもごめんな、…行ってくるわ」
❮ちゃんと最後は隠した想いが見つからないように横から背中押すから❯
❮誰よりも幸せにしてあげて❯
原案
back number『幸せ』