流星くんが宅配便のお兄さんだったらの話。
流星くんが宅配便のお兄さんだったらの話。
もし流星くんが宅配便のお兄さんだったらまず朝は絶対気だるそうにしてるし、目も見ない。
「ここにハンコお願いします…」
疲れてんのかなこのひと(?)ってなりながらハンコ押したら、すぐに荷物押し付けて帰る。
だからその時はたいして気にしてないんだけど、夜になったら覚醒するらしい流星くんは夜にはナチュラルハイになってて、
「こんばんは~夜になると涼しいっすね~、あ、ハンコお願いします」
てなるからあれこの人この前の気だるそうな人だよなぁって不思議におもって
「朝はもっとだるそうにしてません?」
したら流星くんはぷはって笑って
「朝はどうしてもまぶたが開かないんすよぉ~」
ここで笑った顔初めて見たからなんかきゅんときちゃう。
は~涼し~って宅配のキャップとって髪の毛くしゃってするそのふとした瞬間の少年らしさに心惹かれるんだ~
それから宅配便が来るたびにあの少年じゃないかって期待するようになる。大体は流星くんが来てくれるんだけどたまにおじさんのときがあって。
いつものあの子じゃないんだって少し落ち込んだ時におじさんがそのこと感ずいて、あぁ~藤井くんはね、今日はサッカーの試合らしくて休みですよ~なんて情報をくれたり。
あの子藤井くんていうんだ…しかもサッカー部ってすごくモテそうだなぁ、今度あったときに聞いてみよう、なんて思ったりして。
「お届けものでーす、」
きた!ってもういつかの青春してたころに戻ったみたいにうきうきしていた。
「やっぱり朝は眠そうだね」
「なんでそんなに嬉しそうなんすか?」
「サッカーの試合だったんでしょ?お疲れさま」
この前別の宅配便の人に教えてもらったんだ~って言ったらなんで知ってんすか!って少し照れたようにに言うからかわいくって自然に笑がこぼれる。
「藤井くんっていうのも、教えてもらったの」
「…藤井流星です、俺」
「流星くん?」
そう呼んだらこっちをじっと見て、数秒たったらぷいっと目線をそらす。
「…どうしたの?」
「なんか、余裕な感じがずるいやん」
いきなり敬語じゃなくなってしかも何故か拗ねている。余裕なんてこっちにはないのだが…
「今度来た時に麦茶欲しいねんけど!」
「いいけど…急にどうしたの?」
「別になんもあらへん!約束な!」
と逆ギレ気味に帰っていった。
その次の日の夜にまた彼が来た。インターホンきって、ドア開けた瞬間
「麦茶、欲しいねんけど」
すぐ目の前に彼の顔があってびっくり。急すぎて少しフリーズしてたら、なぁ、ってほっぺつままれてまたびっくり。
「あ、ちょ、ちょっと待ってて!」
キッチンの冷蔵庫に麦茶を取りに行く。年頃の男の子はこんなにも積極的(?)なのか。しかも荷物持ってないから業務外で来たのかな、なんて色々考えながら玄関で待つ彼に麦茶をもっていく。
「ありがとーございます」
コクコクと麦茶を飲む彼。少しして飲み終わっておいしかった~と呟くと、
「ひとり暮らしなん?彼氏は?」
いきなりのワードに驚いてつい、え?と聞き返してしまう。
「…おらへんの?」
「あ、…う、うん。」
「家上がってええ?」
「えっ、…ちょっと待って!」
ずかずかと勝手に家にあがりこむ彼。リビングにつくと、ぼーっと突っ立っている私の手を引いて自分の近くに来させる。
「俺のこと気になるんやろ」
何も否定できない私。すると彼はずっと握っていた私の手の甲にちゅっとキスをした。
「!?」
「俺にどきどきせえへん?俺のこときらい?」
「…きらいじゃないよ、」
「じゃあ、すき?」
「…かもね。」
言ってしまった。仮にも学生でバイトしている身に。恐る恐る彼の方を見てみると、
「明日からもここに来てええんか?」
照れたように下向きながら話すからかわいくってえへへって笑うとばかにすんなや!ってぷりぷり怒り出すからそれもまたかわいい。
次の日、インターホンがなると私の胸はいつも以上にどきどき。彼が来た。
がちゃっとドアを開けると今日はいつもの宅配便の格好をしていた彼。
「ハンコお願いします、」
このやりとりも、もう何回目か。彼と両想いになれた私は完璧に浮き足がたっていた。
はーい、っていつも通り紙にハンコを押そうと下を向いた時、
ちゅっ
そのさらに下からのぞき込むように彼の顔があって、キスされた。
またもや突然のことにフリーズしてる私に、彼はこう言う。
「…昨日の仕返し、」
年下の彼との恋愛はかなり大変になりそうな予感。